2004.7.28


空へ。 佐緒里さんは、時としてとても残酷で、徹底して容赦がない。狙い澄まして私の中の病巣を抉り出す。炙り出された毒素は、それでいてもなお飲み込んでしまいたいのに。

わかってる。頭ではわかってる。癒したくない傷、抱え込んですがっていたい病まで、時は無感情に癒していく。

「覇気がなくなったよね」

彼女にそう言われて、覚悟を決めた。多分、私は逃げている。覚えていることから。それを認識することから。

「感情は、殺しちゃだめだよ。泣きたい時に泣かないのは、やっぱり自然じゃないんだよ」

彼女の淹れてくれた珈琲。火傷するほど熱くて、スプーンの立つ程に濃いそれを啜って、ようやく私は涙を思い出した。



一年越しの失恋の続きをはじめよう。






2004.7.25


近所の原っぱで咲いてたアザミ。 巨大な戦艦の砲塔がゆっくりと私に向いた。――刹那、脊髄の奥底の生存本能が操縦桿をひっぱたくように薙ぐ。私がいたその位置を強烈な白光が突き抜けて行く。VIPERの外装が音を立てて持っていかれるのがわかる。至近距離を敵艦の主砲が抜けたのだ。直撃は免れたものの、VIPERのダメージはもう限界に来ている。もう、後がない。戦闘に次ぐ戦闘で私自身の体力も限界だった。霞む視界も、震える腕も、もう後数分もすれば私の言うことを全く聞かなくなるだろう。鼻から垂れてくる錆びた鉄の味が気持ち悪い。喉の奥から込み上げてくる吐き気は、真っ赤な吐瀉物となってパイロットシートを汚していく。耳鳴りと勘違いしそうな狂った警報は、もはや浮いているのが不思議な程に破壊されたこの機体にとって何の意味も持たない。

ゆっくりと、ゆっくりと照準を合わせる。自分の物とは思えないほどに、重く、反応しない手足を叱咤する。マルチプルポッドが同期をとったことを示す信号を送ってくる。紅く鈍く光る相手のコア。彼らにとっての眼。そして、四方からVIPERに向けてありとあらゆる殺戮兵器が狙いを定めたことを示す警告音。

神などこの世界にはいない。信じたことのないその存在を呪った。呪って、そして祈った。当たって。当てて。砕け散れ。吹き飛べ――!

わかったのは、私がレーザー照射を開始したその瞬間、VIPERのキャノピーが吹き飛んだこと。緋色の爆炎が渦巻く様が一瞬だけ見えた。綺麗だった。誰かが自分の名を呼んだ気がした。死すら意識することなく、私の意識は宇宙へと帰って行くのだろう。

母様…。



シューティングゲームが実は大好きで、先日発売されたグラディウスVに熱中しています。あまり上手ではありませんけど。たった一機で絶望の只中から、全人類の命運を賭けて飛び立つ反逆者。説明書に小さく描かれるその申し訳程度のストーリーは、逆に想像を掻き立てるのです。

どんな人がパイロットなんだろう。家族は何と言って彼女を送り出したんだろう。出立前夜、恋人とはどんな会話を交わしたんだろう。彼はどんな思いで、空を見上げて、そして運命の日を迎えたんだろう…なんか、考えてるだけで悲しくなってくるのだけれど、私はいつも彼らを生還させることができません。ごめんよ。

ゲーム、昔から好きでした。ゲームセンターにもよく出かけて遊んでました。ガンシューティングとかいいですね。

格闘ゲームは?と聞かれることもあるのですが…。やってみたかったんですけどね。昔、ゲーセンでバーチャファイターを遊んでいたら、どうも「女が遊んでいる」ことを気に入らない人がいたみたいで、飲みかけの缶ジュースを投げつけられたことがあってからやれなくなりました。

その時は怒ったりとかの前に、兎に角怖くって。今考えて見れば100%向こうが悪いのに、何で逃げ出してしまったんだろうと思いますが、何も考えられなくてトイレで汚れたところを必死に濯いで急いで帰って来てしまいました。お店の人とかに文句言うとか、いろいろ方法はあったと思うんだけど、今また同じことが起きたらと考えると、やっぱり冷静に対処出来る自信がありません。

トラウマになってるわけじゃないと思うけど、そんな理由から格闘ゲームは敬遠してしまいます。いいんです。シューティング愛してますから。

グラディウスVはまだ全然先に進めていないのですが、演出も背景スクロールも的の攻撃ももう全てが見てて楽しいです。BGMもクラシックとテクノが融合したスタイルで素敵でもうこの音楽ずっと聴いていたいよう…。

なので、私は超時空戦闘機「VIC VIPER」に乗り込み、奇襲をうけたとされる衛星軌道上の宇宙ステーションに向かおうと思います。

敬礼!






2004.7.24


森の奥の光が注ぐ場所。 試験が明けた、ということでゼミの飲み会がありました。件のchemistryの川畑さんに似ているという彼も参加してました。言われてみれば目元とか似てますね。でも、金髪に髭にピアスはなあ…。

その彼とも少し話をしました。開口一番「こんにちは」と言われたのが少し可笑しくて。まあ面識無かったし。でも、そうやって面識の無い人にも話し掛けていこうとする姿勢が強いなあって。

彼にそう伝えると、少し笑ってから「でも、自分で意識して、そう振舞ってる部分があるよ」と打ち明けてくれた。

「自分」というキャラクターに何が求められているのか、そういう事を意識しての振る舞いなの?と聞いたら、彼は少し考えてからこんな話をしてくれた。

高校の頃とかってさ、誰かが俺に対して何を期待しているとか、そういうことに昔から凄く敏感で、人の顔色と機嫌ばっかり気にしてた。けど、そういうの止めようって思ってさ。取りあえず、ぶつかって、話をしてみないとわからないこともあるし、怒ってたって、泣いてたって、話すことで解決したりすることだってあるだろ。そりゃこじれることだってあるけど、それがきっかけで仲良くなれることだってあるし。なんていうのかな。勿体無いと思ったんだよ。そいつのこと知らないままわからないまま通り過ぎて行くのって、なんか勿体無いじゃない。

酔っていたのもあるので、完全には再現できていないと思うけど、そんな話。

やろうと決めて、実行できてしまうのは凄いことだと思うよ。彼のそんな話を聞いていたら、金髪も髭も、ピアスもなんだか素敵に見えてくるから不思議。



ごめん、最後のはやっぱり嘘。いい話だったけど、耳元に揺れる碇のピアスをずっと見てました。



そんなわけで、今日は夕方まで二日酔いで苦しんでいました。まだ少し頭痛いです。
気持ち悪いのは収まったから、冷麦でも茹でようかな。おなかすきました。

葱も海苔もないので寂しい夕食になりそうです。ちぇ。






2004.7.20


シオカラトンボ。 そのつもりは無かったのですが、実家に戻っていました。先日、父親の携帯電話に昨今話題の債権回収業者を名乗る電話があったらしく、娘が出会い系サイトを使用しているとかなんとか言われて慌てたみたいです。物凄い剣幕で電話が掛かってきた時にはどうしようかとも思いましたけど。

久しぶりの実家は懐かしいようでいて、でもああここはもう私の家じゃないんだなあと感じたり。両親はいつでも戻って来て構わない、寧ろ今すぐにでも戻って来いと言いますが、一度外に出て一人で暮らすことを覚えてしまった今、その選択肢は私の中にありません。仕送りにはとても感謝しているけれど、早く一人で独立出来るようになりたいと、そんなことを考えます。

家を出て一人で暮らす、というのは私にとってどうしても必要なことだったなあと今でこそ思います。親にしてみれば家から学校に通えるのになんでわざわざという思いだったでしょうが、私は家を出たくてたまらなかった。仕送りとアルバイト代をやり繰りしながらの生活は、それ自体が大切な経験になって私の中に蓄積していく。親と随分険悪な雰囲気になった高校時代が嘘のように今父親と笑いながら晩酌しているのも、「暮らす」というただそれだけのことにどれだけの責任が付きまとうのかを私が実感できたからなんだろうな。

「女なんだから」で始まる説教も、今日は目くじら立てずに訊いてあげよう。親って、本当にありがたい。この年になって私はなお、返すことの出来ないモノを両親から受け取り続けている。でも、それを感謝するのも、なんとなく照れくさい。

一人暮らし、許してくれてありがとう。心配してくれて、ありがとう。そして何よりも、私のことを信じてくれてありがとう。

ビールをついであげただけで、そんなに喜ばないでよ。恥ずかしいから。






2004.7.18


避雷針。 人との距離の測り方がよくわからない。大学生になるまで生きてきてそんなことも知らないのと言われそうだけど、わからないものはわからない。人が嫌がるところまで踏み込まないのは簡単だけど、仲良くなろうとすると何処まで話していいのか、どこまで訊いていいのかの境界線が見えなくなる。

大学生の時の友達が人生で一番の友達になるぞ、なんて言葉を耳にするたび、それは人それぞれなんじゃないかなあといつも反発したくなる。あなたにとっての大事な友人がたまたまそうであっただけで、私にとっての親友と呼べるような人は幼稚園からの幼馴染なんだし、そんな風に断定しなくてもいいじゃないって、いつも思うのだ。

なのでいきなり好みのタイプとかを話題に振られても困ってしまうのだけれど。

あなたとはそんな話をするほど親しくないですよ、と言えれば楽なのかなと一瞬考えたけれど、親しくなったところで触れられたくない話はあるし、彼女だって沈黙が下りないように必死で気を使ってくれたのかもしれない。私はあまり愛想がないと思われている節があるので、その場にいた男の子に対しても話題に入ってこられるようにとの配慮なのかもと思っていろいろ考えてみた。

背の高い人。優しい人。でも、タイプと言えるほど好みって偏ってないなあ。好きだった人たちはみんなバラバラの性格で、外見も同じような人は殆どいなかったし。

「一つのことでいいから熱中できる何かを持ってる人がいいな」と言ったら、ああそうねと納得してくれた。優しくなくても、背が高くなくても、極端な自信と専門知識に溢れてる人。ああ、私の好みのタイプってそういう人だなと改めてわかったような。だってみんなそうだったもんなあ。攻撃的で、無駄に自信が漲っていて。私じゃない何かに熱烈な恋をしていた彼らは、結局のところ私を必要としない人たちだった。彼らは「恋」に悩んだときだけ私を必要としてくれたのかもしれない。

気が付くとみんなそれぞれの好みのタイプの話で盛り上がっていた。茶化すような「ありえねーよっ!」の声、笑いながらそれに講義する声。

「椎名さん、芸能人で言えばどんな人とかって、ある?」
あまりテレビを見ないのでと言ったらまた引かれるかなあ…必死に記憶をかき回して「chemistryの川畑さんとか、いいなあ」と言ったらみんなの様子が意味ありげ。どうもゼミに似てる人がいるらしい。

人との距離って、わからない。けれど、私はここに居てもいいみたいだ。






2004.7.16


夕立。 「ブラジルにいます。旅してます」
日差しの強烈な中に佇む犬と、旧い石造りの町並みの写真。海を渡るための消印。
絵葉書に書かれた、たったそれだけの短い文面。彼なりの暑中見舞いのつもりなのだろうか。

花火を二人で見たのが最後の楽しい思い出だったから、もう彼と別れてから一年近く経つ。全く連絡を取らなかったわけではないけれど、泣いて、怒って、最後は笑って友達に戻ろうと決めて、それでも今は疎遠になってしまっている彼のしまりの無い横顔は、今でもふと浮かんできてはにやけてチェシャ猫のように消えていく。

ケイタイの中にも彼とのやり取りは残っていない。別れようと決めた日に全部消してしまった数キロバイトの思い出は、一瞬でそこからいなくなって、そこにあったことすらわからなくなった。けれど、彼の名前と電話番号、メールアドレスは「友達に戻る」という言葉に呪縛されて消せないで今もこの忌々しい装置の中に存在し続けている。

短い文面の彼の暑中見舞いには、文面よりも大きくスペースをとって見覚えのある電話番号とメールアドレスが書き記してあった。なんとなくだけど、去年の今頃感じていた気持ちと今の自分が重なって嬉しくなって涙が出た。辛かったけど、でも、私は。

馬鹿だね。絶対連絡なんて、しないから。






2004.7.15


駅へ行く途中にある夏。 テスト勉強をしなければいけないと分かっている時間は勉強に集中できず、かといって読書やゲームに没頭できるほど図太い神経もしていない。なので、自信のあるところはさっさとテスト終わらせてしまいたいです。このままじゃ何も手に付かないよ。

そういうわけで、というわけでは全然なくて単に頭のどこかが退屈してただけなのだけれど、ぼんやりと小説のプロットやワンシーンを考えて過ごす時間が多いです。困ったことにストーリーや、そのシーンに至るまでの道筋は全く出てこなくて、なぜかクライマックスシーンに該当する部分だけが目の前に現れて、入り込んでいる自分がいる。

私はいきなりその場に現れた部外者のはずなのに、一瞬で事情をすべて飲み込んで「彼女」もしくは「彼」の悲しみに押し流される。困るのは教室の中や電車の中でもやらかしてしまうこと。いきなり泣き出したら絶対変な風に思われるよなあ。

簡単なレポートの課題がいくつか出ていて、テストが全部終わったら佐緒里さんの家で泊りがけでやっつけることにした。問題は遊ばないではいられないだろうかなんだけど、コンシューマーゲーム機が無いので自宅で過ごすよりははかどりそう。

でもGBAくらいは持っていこうかな。

それよりも。
あまりにあんまりな偏食家の彼女に、何をお土産にしようか今から考えておいたほうがいいかもしれない。

どうしても欲しいワンピースがあって、でも財布との折り合いが付かなくていつも物欲しげに眺めて手にとって終わってしまうのだけれど、気が付いたらレジに居た。ああああ。

ホルターネックの元気な感じの。今年の夏、これ着てどこいこう。






2004.7.14


季節の残り物。 登録してない番号に呼び出されて鳴り続けるケイタイをしばらく見つめてから通話ボタンを押してみた。フルネームで呼びかける上ずった男の声にはやっぱり聞き覚えがなくて、さては何か詐欺とかそういうのかとも思ったのだけれど、彼の要領を得ない説明と先日ゼミで記入してきた有志作成の連絡網のことを思い出して謎が解けた。疑ってごめんよ。飲み会のお知らせだったんだね。

あまり親しくない人と顔をつき合わせて話をするのにはある程度のエネルギーが必要で、面倒くさいな、と思う反面、何かそれを楽しみにしている自分がいる。どちらが本当の気持ちかといえばたぶんどちらも本当の気持ちなのだけど。

それでも人と話をするのは楽しい。自分の知らない世界のことをいろいろ教えてもらえるのは単純に素敵なことだと思う。話の合わない人と話すことを楽しむ、という多少意地の悪い飲み方も覚えたし。ただ酒癖の悪い人は勘弁して欲しい。

買ったのだけど、着る機会が無くなってしまったキャミソールを穿き古したストレートのジーンズと合わせてみた。当日はこれを着ていこう。ストラップ付いてるからそんなに派手さもないし。

試験前なのに浮かれている自分。なんだ、ちっとも面倒がってないじゃないか。






2004.7.13


空が綺麗だったので。
とりあえずサイト開設。疲れた。
おまけに小説中心に据えたいのにまだ書いてないし。
でも今日はここまで。






                   





















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